近年、農作物の生産者と消費者をつなぐ取り組みとして「地産地消」が注目されています。その背景には、どのようなものがあるのでしょうか。

今回は、地産地消について解説します。地産地消の必要性や生産者と消費者にとってのメリット・デメリット、地産地消へ向けた3つの取り組み、地産地消を個人で実践する方法をご紹介します。地産地消についての理解を深め、できるところから始めてみましょう。

地産地消はなぜ必要か?

地産地消は、農林水産省が推進してきた事業です。地産地消はなぜ必要なのでしょうか。そもそもどのような取り組みなのでしょうか。地産地消の意味と必要な理由について解説します。

そもそも地産地消とは

地産地消とは、地元で生産された農作物をその地域で消費する取り組みのことを指します。この取り組みは、農村の消費を促し、地域活性化を目的にしています。また、農作物の生産者と消費者を結びつける役割を担っています。

理由①日本の食料自給率を上げることができる

日本は食料自給率が40%未満となっており、食料の大半を海外からの輸入に頼っている状況です。食料自給率が低いと、異常気象や国際情勢などなんらかの事情で外国からの輸入が途絶えた時に、日本の食生活に大きな影響を与える恐れがあります。

地元で生産された農作物をその地域で消費すれば、食料自給率の向上につながります。日本の伝統的な食文化を守るためにも地産地消は重要です。

理由②第一次産業の減少を防ぐことができる

日本の第一次産業は、後継者不足や高齢化の問題により減少傾向にあります。地産地消で生産者と消費者の距離が近くなることにより、消費者側は地元産の農作物への愛着や安心感が湧き、地域の消費拡大につながります。消費拡大によって農家の収益もあがるため、結果として地域全体で農家を支援するコミュニケーションの輪が形成されます。

地産地消のメリット・デメリット

地産地消には、良い面もあればそうでない面もあります。生産者・消費者それぞれの視点でメリット・デメリットがあることを理解しましょう。

生産者へのメリット

・消費者のニーズが届きやすい

地域で生産したものを地域で消費するので、消費者の評価や反応が直接届きやすくなります。その結果、農作物の品質改善や生産者のモチベーションアップにつながります。また、顧客のニーズをとらえた効率的な生産を行うことができるので、農作物の廃棄量を削減し無駄をなくすことができます。

・流通コスト削減によって農家の収益が向上する

農作物が消費者の手に渡るまでの食料の輸送コストや中間マージンの削減により、農家の収益向上が期待できます。増えた収益は、よりよい農作物を収穫するための品種改良や農具や機器の維持費に充てることで、消費者側は、今後も安全性の高い農作物を食べることができます。そのため、両者にとってよりよい関係を築くことができます。

消費者へのメリット

・生産者の顔が見えるため安心感を得られる

地産地消は、既にその地域で生産された農作物であることがわかっているため、消費者側は農作物の生産状況を確認できます。食の安全性が求められる中で、生産状況がわかるのは安心感につながります。そのうえ、地元で生産されているため新鮮な食材を安価で手に入れられます。栄養が豊富に含まれた野菜は丈夫な体づくりに欠かせません。

・食と農について理解を深めるきっかけになる

生産者の顔が見えることで、農作物の生産や消費について考えるきっかけになります。食物の育つ過程から、食卓に並ぶまでには多くの人が携わっています。そういった生産から消費までの流れを知ることで、普段の生活で食べ物を無駄にしないよう購入量を調整したり食べ残しをなくしたりと、環境に優しい生活を考える機会になります。

地産地消のデメリット

・出荷や販売までを担う労働力の確保

地域だけで流通を完結させるとなると、生産者は生産以外にも農作物の品質管理、宣伝、販売をしなくてはなりません。一人で行うには限界があるので、労働力を確保する必要があります。売り出す際には「地産地消」というだけでは消費者に伝える要素としてはアピールが弱いため、独自のブランドを確立して売り出せるような営業能力も必要です。

地産地消へ向けた3つの取り組み

農林水産省が地産地消を推進していることもあり、地域での取り組みは広く浸透しています。取り組みの目的は、地産地消を広めるだけでなく生産者と消費者の結びつきを強める意図もあります。地産地消に向けた3つの取り組みを紹介します。

直売所の運営

農作物の直売所運営は、地産地消に大きな役割を果たします。住民にとって直売所は、地元の農作物を気軽に購入できる場です。生産者自身も販売に携われるため、質は良くとも商品とならなかった規格外品を、自己責任のもと販売することができます。直売所の場は、生産者と消費者の双方が対面できるため交流のきっかけになるうえ、生産者にとっては、消費者の反応をダイレクトに感じられる場でもあります。

学校給食への利用

学校給食においては、地元の農作物の活用に努めること、地域の農作物の使用割合を増やすことが学校給食法にも明記されています。学校は、毎日一定数の子供たちが食事をする場です。そのため、学校給食に地元農作物を使用するためには、安定した供給量を確保できるかが求められます。一回で多くの量を使用するため経済効果も期待できるうえ、学校ごとに地産地消推進メニューとして、独自の献立を提供することが、子どもたちの食に対する興味関心を促します。

地域の生産者との交流・体験活動

最近の子どもたちや若い親世代は、食や農に対する体験活動が乏しい傾向にあります。生産者とともに農業体験など交流を行うことで、地元農産物の特徴や成長までの過程を含めた食と農について考える機会をつくります。そして、学校給食を食べることから何を学びとることができるかなど、普段の生活とリンクさせて考えさせることができます。

地産地消を個人で実践する方法

地産地消の取り組みを利用する以外にも、個人が行える地産地消の方法があります。普段の生活で地産地消について少し考える機会をもつことで行動が変わります。ここでは、個人でも地産地消を実践できる方法をご紹介します。

畑を持って野菜を作る

自分で畑を持ち、野菜を作る経験は生産者の視点を実感することができます。生産者と消費者の視点、両方を持っていると、生産者の苦労や食の大切さを身近に考えることができます。今は、副業や兼業で農業をしている人が増加しています。農業を仕事として携わりたいという方は、自分のライフスタイルに合わせた働き方を選択して農業を始めてみるのもおすすめです。

地元野菜を使った飲食店を利用する

地元野菜を使った飲食店を利用すれば、地元で獲れた新鮮野菜も味わうことができるうえ、食事をしただけで地産地消もできます。手軽に地産地消を実践するなら、地元野菜を使った飲食店を利用してみてはいかがでしょうか。

地産地消に参加するなら活用したいサイト

誰でも地元の地産地消に参加することは可能です。地元の特産野菜や伝統の食文化を守るために、地元の地産地消を行ってみませんか。地産地消に参加するなら活用したいサイトをご紹介します。

野菜作りを経験して自ら地産地消を体験できる畑のレンタルサービス【シェア畑】

東京都内を中心に急増している畑のレンタルサービスです。手軽に野菜作りを学び、採れたての無農薬野菜を楽しんでもらいたいという思いからスタートしたサービスです。

都心にいる子供たちは、スーパーで並んでいる綺麗な野菜ばかりを目にし、実際にどうやって野菜が育てられているのかと知る機会が減少しています。野菜作りを体験をすることで、食に対する意識が育まれます。野菜嫌いな子供も野菜本来の甘さを知ることができます。畑には必要な肥料や農具が用意されているので手ぶらで通えるのが嬉しいポイントです。

まとめ

生産者と消費者の顔が見える地産地消の取り組みは、双方にメリットがあります。生産者との交流を通して、野菜作りにおける思いを知るとともに、農作物への理解を深めることができます。こうした交流を介して手元に届いた野菜の味は、いつも食べているものよりもさらに美味しく感じます。今、あなたにできる地産地消を始めてみませんか。